Twitter企画「令和36歌仙になろう」

開催概要

令和元年に開催する特別展「流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美」では、飛鳥時代から平安時代の傑出した和歌の詠み人、36名の歌仙に光を当てます。千年の時を超え、古(いにしえ)の31文字が伝えるものは? そして、いま、私たちが詠む31文字は? 本展の関連イベントとして、「令和36歌仙になろう」と題し、Twitter投稿にて、皆さまから短歌を募集します。投稿いただいた短歌の中から優れた短歌36首を選考し、その詠み人を「令和36歌仙」として発表します。

「令和36歌仙」を発表します!/©末次由紀/講談社

「令和36歌仙」に選ばれた短歌、ユーザー名、講評を発表します。

  • ※掲載はお題順、投稿順。
  • ※ユーザー名は、2019年10月8日現在。
恋

収集日まだ知らないから置きっぱの壊れた掃除機、段ボール、恋

つぎり @tsugiri

講評「壊れた掃除機」「段ボール」に続けて「恋」と来るところに意外性があります。おそらく失恋した後もなかなか気持ちの整理がつかないのでしょう。要らなくなった恋だけど、まだ捨てられずに残してあるのです。

周波数合わせるように耳澄ます心震わすあなたの声に

麻々帆 @TyeoJrZAzXav4om

講評初句・二句の比喩がいいですね。相手の声を少しでも聞き漏らすまいと、ラジオの周波数を合わせるようにじっと耳を澄ませている様子。恋人の声は特別なものなので、一語一語が深く身体に沁み込んでくるのです。

あとはもう欠けてゆくだけ満月の夜はあなたに会うのが怖い

くらげただよう @tadayou_k

講評満月はきれいで明るいイメージで語られることが多いですが、「あとはもう欠けてゆくだけ」とネガティブに捉えたのが印象的。恋が順調に進んでいるからこそ、うまく行かなくなることへの不安も増すのでしょう。

踝にストラップある赤い靴はいて出かける君に会う日は

みなま @minama6481

講評アンクルストラップの付いたおしゃれな靴を履いて出掛ける場面。赤い色も恋の気分とよく合っています。ストラップには足首をきれいに見せる効果もあるので、自信を持って相手と向き合うことができそうです。

嫌いなら嫌いと言ってハンカチを落とされたことに気づくのが下手

榎本ユミ(エノモトユミ) @enomotoyumi1007

講評相手の態度にどこかよそよそしさを感じたのでしょう。もし好きでなくなったのなら、はっきりそう言って欲しいと迫るのです。それとなく言われていても気づかないことがありますから。ハンカチ落としの比喩が巧み。

肩代わりできないけどただそばにいて例えば辞書をめくるなどする

鮎川むぎ郎 @mugi_low

講評大変な仕事に取り組んでいる相手に対して、何か少しでも力になりたいと思うのですね。もちろん、実際に辞書をめくったところでほとんど役には立ちませんが、それでも支えようとする気持ちが嬉しいもの。

あなたとふ雨に抱かれて色を増す言の葉の森私よひらけ

無兎(のらびと) @Muto_NoRabbit

講評とても美しく官能的な歌です。相手に包み込まれて自分が解き放たれていくような感覚でしょうか。殻を脱ぎ捨てて本当の自分を出せる喜び。森の木々の葉が芽吹くように、次々と内側から言葉が溢れ出るのです。

名も知らぬ海辺の土地に逃げ出してラムネ飲みたい君と。わたしは。

ゆーい'ち @nyaposhine

講評二人で駆け落ちをする想像の中で作者が願うのは君とラムネを飲むこと。何ともささやかな、でもそれだからこそいっそう切実で夢のような願いなのでしょう。一見簡単そうな願いでも実現するのは大変なことです。

俯いて文庫本読む窓際であなたの視線に気付いてしまう

みちくさ @michikusa_31

講評無心に本を読んでいるようでいて、実は視野の端にいるあなたのことが気になって仕方がないのです。あなたも気にしてくれているようで、こちらを見ている。その視線に気づきながらも、目は文庫本に向けたまま。

百

冬の夜風邪をひいたらお風呂場で百を数えるこどものように

西山香葉子@べにすずめ@固ツイ見てね @piaf7688

講評そう言えば子どもの頃はよく「肩まで浸かって百数えなさい」と親に言われたものです。大人になると誰もそんなことしなくなるのですが、風邪を引いて心細くなった時にやってみたのですね。身体も温まります。

秋風に百舌のはやにえ見つけたり君は戻るかあるいは去るか

タナボタ @PMV78yuq74cSNRs

講評「百舌」(もず)という題の使い方が上手ですね。木の枝に刺しておいた餌を百舌がまた食べに来るかどうか考えているのでしょう。あるいは、君との恋の場面を詠んだ歌としても読むことができそうな一首です。

友チョコの全てが揃う百均の製菓売り場に笑顔の咲けり

野添まゆ子@12/15大阪講演会 @ku17ka31

講評バレンタインデーのお菓子売場。元々は好きな人にあげるものだったチョコレートですが、今では義理チョコ、友チョコ、自分チョコと多様化しています。店には様々なチョコが並んでいて見ているだけで楽しいです。

かくれんぼ百まで数えず走り出すあなたの気配なくなる前に

みんみんうさ @sasahizu2018

講評かくれんぼの鬼役は普通目をつぶって百を数えてから隠れた人を探しに行きますが、ここでは少しズルをしてその前に追いかけ始めたのです。人の気配がなくなってあなたを見失ってしまうのが怖くなったのでしょう。

気付いてて「一人多い」と言えぬまま間もなく終わる百物語

鬼無里 @Ajx4LslYQ2HpOFP

講評「百物語」は夜に人が集まって百個の怪談を語り合う遊び。いつの間にか参加者が一人増えているのは、妖怪が紛れ込んだのでしょうか。「気付いてて」という動詞から始まる歌の流れが緊張感を高めて効果的です。

百年に満たぬよはひをもてあましプラスチックの海を見にゆく

森尾みづな @moriomizuna

講評近年、プラスチックによる海洋汚染が問題になっています。人間の寿命が百年に満たないのに対して、環境問題は何世代にもわたって続く問題です。異なるスパンの時間を思いつつ、ぼんやり海を眺めてるのでしょう。

百年の先に生まれる人々のために継がれる言の葉の海

ふき @2a8r7i2

講評人間の寿命は百年にも満たないものですが、人間の書いた言葉は何百年も後まで残ります。私たちが言葉を書くこと、短歌を詠むことも、そうしたまだ生まれていない人に宛てた手紙のようなものかもしれません。

おさな児を背負いてゆけり百房のむらさき垂るる秋の果樹園

asano kaoru @k_shizukuya

講評お子さんをおんぶしてブドウ狩りに来たところ。ブドウと言わずに「百房」や「果樹園」で表したところが良いですね。斎藤茂吉の名歌「沈黙のわれに見よとぞ百房の黒き葡萄に雨ふりそそぐ」を思い出しました。

百合根なら塩でからんと炒めればおいしいわよと劉さんが言う

袴田朱夏 @hakamada_shuka

講評劉さんは知り合いの中国の方でしょうか。百合根は中華料理でよく使われる素材なので、食べ方を教えてくれたのでしょう。「塩でからんと」のあたりから、お互いに気心の知れた者同士の感じが伝わってきました。

秋

秋の香にさそわれてみればキンモクセイそこにいたのとはじめて気がつく

いしい まな @kiha_0519

講評キンモクセイは小さな花が密生して咲きますが、やはり香りが特徴的。視覚ではなく嗅覚でまず気が付いて、あたりを見回したところ橙黄色の花が咲いているのを見つけたのです。秋らしい季節感のある歌ですね。

学ランがセーラー服に食べかけのりんごをもらふ秋の日の土手

新井蜜 @araimitsu

講評蕪村の「春雨やものがたりゆく蓑と笠」は換喩の例としてよく挙げられますが、この歌も「学ラン」「セーラー服」が、それぞれ男女の中高生を表しています。少し懐かしいような素朴な恋の場面が描かれた歌です。

思ってた大人にはまだなれなくて秋刀魚のわたの苦みが強い

神山 倶生 @ingen74

講評子どもの頃にいつかは自分もあんな大人になりたいと憧れていたことが、そうはならないこともありますね。作者にとっては、それが秋刀魚の内臓をおいしく食べること。今でもどうしても苦手なままなのです

ただの一度も触れずに別れ来しことの秋風はいい手のひらがなくて

ほ @SYXKigoTw2ERLiN

講評下句の表現に惹かれました。互いに触れることもなく別れた恋を思い出しながら秋風に吹かれているのでしょう。風は人に触れるけれど形はありません。人間は身体があるために隔てられてしまうこともあります。

ふるさとはその名に秋を頂いて黄金の波の誇らしく打つ

神丘 風 @kmtrf4

講評題の用い方がユニークな歌です。「秋」の付く地名をあれこれ考えて、一面に稲穂の稔る下句の光景から、秋田県を思い浮かべました。米どころとして知られる故郷に対する誇りが感じられて良かったです。

カーテンを揺らして落ちる月あかり集めたトパーズ。あなたにあげる。

そら@シナモロール王国民 @nao_sora

講評句点「。」を二回使った文体が面白いですね。トパーズは11月の誕生石。いろいろな色をしたものがありますが、ここでは「月あかり集めた」とあるので、和名の「黄玉」のような黄色いトパーズなのでしょう。

しあはせは空いつぱいのあきあかね新芽のやうに夕陽に並ぶ

ゆかつち@コミックエッセイ @yukatuchi3

講評四句の「新芽のやうに」という比喩がとてもいいですね。夕焼け空に飛ぶたくさんの蜻蛉の姿を、つんつんした新芽に喩えたのです。植物の芽が一斉に萌え出る時のような溢れんばかりの生命力を感じる歌です。

作家書斎の釣瓶落としの暗闇にほの明るみて竹原秋幸

河村壽仁 @KAMUTAN

講評「竹原秋幸」は中上健次の小説『枯木灘』の主人公の名前。作家の言葉によって生み出された主人公が、秋の日暮れの書斎に立っています。複雑な出生の事情を抱える主人公の内面までも見えてくるような歌です。

菊と百合親の好みを従えて四天王寺へお彼岸参り

らぶらぶきてぃ @lovelovekitty58

講評秋の彼岸に両親の墓参りに行くところ。父母のうち一人は菊が好きで、もう一人は百合が好きだったのです。その両方を携えているところに愛情を感じますし、夫婦の仲の良さも感じられるように思いました。

旅

あのひとをずるいと思ふ良い旅をしてきたやうな眼差しをして

とがしゆみこ @yumicomachi

講評「良い旅をしてきたやうな眼差し」が独特な比喩ですね。満ち足りた感じでどこか遠くを見ている眼差し。それは作者には手が届かないものだからこそ、悔しくもあるし、また強く惹き付けられもするのです。

当てどなく故もなく泣くみどり児の母をたづぬる六畳の旅

八条 @8jo_St

講評赤ん坊は四六時中ほんとうによく泣きます。空腹や排便など理由がわかる時もあれば、わからずに困ってしまう時もあります。結句「六畳の旅」がいいですね。六畳とは言っても赤ん坊にとってははるかな旅です。

辿りつく場所の小さな微笑みのマトリョーシカの最後のひとり

うかじ @19pyon71

講評入れ子式になった人形を一つまた一つ取り出していく。それを「旅」と捉えたのがいいですね。最初は大きかった人形がだんだん小さくなっていき、最後の一番小さな人形が現れるまでの楽しい気分が伝わります。

ひとときの旅人となる展示室 広重の雨に肩を打たれて

morita kaori @nisihoshieru

講評歌川広重の浮世絵には「大はしあたけの夕立」や「庄野白雨」など、しばしば印象的な雨が描かれています。展示室で絵を見続けているうちに、絵の中の世界に入り込んでしまったように身体に当たる雨を感じたのです。

知らぬ地へ祖父を導く我の手にスマホあり次左へ曲がる

古屋東雲 @108_dos

講評祖父を連れて知らない場所を訪れる場面ですが、スマホの地図アプリがあれば安心。画面の指示に従って歩いて行けば目的地に着きます。祖父と孫の二人の旅を現代的な機器がサポートしてくれているのがいいですね。

坂のまち髪の毛先を吹かれつつ旅ゆけりわが裡なる青年

三沢左右 @misawasou

講評山と海が近いような町をイメージしました。「髪の毛先を吹かれつつ」という具体がいいですね。坂道を通り抜ける風。もう青年という年齢ではないのでしょうが、胸の内にはまだ青年の心が息づいているのです。

8年を過ぎても帰らぬ父は今どこを旅しているのでしょうか?

ぽむ @pomuratake

講評おそらく父は8年前に亡くなったのでしょう。それを「帰らぬ」「旅している」と詠んだところに悲しみが滲みます。8年が経った今も、何かの拍子にふっと家に帰って来るような気がして仕方がないのです。

背表紙の文字なにげなく追ふ書架のここがいつでも旅のはじまり

志稲 @yuko_siina

講評家の本棚や書店でも良いのですが、図書館が一番ぴったり来ますね。特に目的もなく本の背表紙を眺めていて、やがて一冊の本に目が留まるのです。そこから本の中の知らない世界への旅が始まるのでしょう。

九つの外湯をめぐる信濃路に君と九回別れて、出会う

トム @tomnekonon

講評下句がとてもいいですね。温泉地に来て外湯めぐりを楽しんでいるのですが、男湯と女湯にいったん別れてまた一緒になるのです。一人の時間があることで二人の時間がより新鮮に感じられるのだと思います。

募集スケジュール 【本イベントの募集は終了しました】

4週にわたって、毎週お題を発表します。

  • 第1週「恋」:8月30日(金)~9月5日(木)
  • 第2週「百」:9月6日(金)~9月12日(木)
  • 第3週「秋」:9月13日(金)~9月19日(木)
  • 第4週「旅」:9月20日(金)~9月26日(木)

  • ※お題の発表は各週初日の昼12時。締切は各週最終日の夜24時。
  • ※選定された歌は36首まとめて、10月4日(金)に本展公式Twitter上で発表します。選定された歌を本展公式Twitterがリツイートしますので、リツイートされたユーザーの方が「令和36歌仙」です。また、選者による講評もリツイートします。
  • ※選定された歌とそのユーザー名は、本展会期中、京都国立博物館や本展公式サイトにおいても、発表(掲示)します。

参加方法

各週のお題の発表の後、各週の締切までに、以下のハッシュタグをつけてTwitterで短歌を投稿してください。

ハッシュタグ: #令和36歌仙


  • ※自作未発表の作品に限ります。
  • ※お題の文字は、詠みこんでも、詠みこまなくても、どちらでも構いません。
  • ※投稿1回につき1首のみツイートしてください。再投稿はお控えください。
  • ※1つのお題に何度でも投稿できます。
  • ※4週すべてに投稿できます。

賞品について

「令和36歌仙」に選定された方には、賞品として、本展観覧券2枚と展覧会オリジナルグッズ(*)を贈呈します。ただし、賞品の送付先は国内に限らせていただきます。「令和36歌仙」に選ばれたユーザーの方のうち、賞品を希望される方は賞品の宛先(郵便番号・ご住所・お名前)を10月9日(水)までに本展公式TwitterにDMでお知らせください。


  • *お手元にお送りするのは「グッズ引換券」になりますので、会場特設ショップでグッズとお引き換えいただく必要があります。あらかじめご了承ください。

監修・選者

松村正直さん(歌人)

1970年東京都生まれ。1997年、塔短歌会に入会。現在、「塔」編集長。歌集に『駅へ』、『やさしい鮫』、『午前3時を過ぎて』(第1回佐藤佐太郎短歌賞)、『風のおとうと』、歌書に『短歌は記憶する』(第9回日本歌人クラブ評論賞)、他に、『高安国世の手紙』、『樺太を訪れた歌人たち』、『戦争の歌』。


~松村正直さんからのメッセージ~

古典和歌を代表する三十六歌仙に思いを馳せつつ、現代に生きる私たちがtwitterにつむぐ歌。はるかな時空を超えてどんな短歌が生まれるのか。三十一文字の共演が楽しみです。たくさんのご投稿をお待ちしております。


松村正直さんのTwitter

注意事項

「令和36歌仙」に選定された歌やユーザー名は、京都国立博物館や本展公式サイトにて発表(掲示)するほか、マスコミの各媒体(新聞、ラジオ、各媒体SNS等)や 京都国立博物館ウェブサイト・ツイッターにおいても紹介される場合がありますので、あらかじめご了解ください。

個人情報の取り扱いについて

ご提供いただいた個人情報は、本イベント以外の目的には利用いたしません。